井汲憲治井汲 憲治
(いくみ のりはる)

経歴

1985年 東北大学歯学部卒業
1993年 日本口腔インプラント学会認定医(現専門医)
2001年 同指導医
〜2007年 昭和大学歯学部総合診療歯科客員教授
現在 一般社団法人日本インプラント臨床研究会理事
公益社団法人日本口腔インプラント学会理事
東北大学大学院歯学研究科 臨床教授

研究テーマ

インプラントの生体力学、コンピュータ支援インプラント手術

コンピュータ支援手術とインプラント治療計画について(実習)

患者にとって安全なインプラント治療を行うこと、また、インプラントが健全な状態で長期間機能することや、審美的な治療結果を達成することは、現在のインプラント治療の成功のための重要なファクターとなっている。

近年の医用画像・CAD/CAM技術の発達や、コーンビームCT装置の普及により、コンピュータ支援の治療技術が急速に普及しつつある。これらの技術はインプラント治療において、@シミュレーションによる詳細な治療計画の立案、A正確なインプラントの埋入、Bノンフラップ手術の実現など、数々の恩恵をもたらしている。しかし、治療計画そのものが不適切であったり、未熟な知識・経験のまま使用された場合には、むしろ治療の危険性が増すことも知っておかなければならない。

インプラント治療の成功の第一歩は、適切な治療計画の立案であり、インプラントの本数やインプラント・ポジションが、機能性と審美性の両面で両立されたものである必要がある。

インプラント・ポジションを考える際には、単独歯欠損であれば、元の歯が存在していた位置がインプラント埋入位置の一応の目安になる。一方、無歯顎の場合には残存骨の骨量・骨質から、インプラントの本数や配置等を決定するなど、生体力学面での配慮がより重要になってくる。その際、前方歯群は審美性、後方歯群は荷重に対する力学的な配慮がより大きなウエイトを占めることは経験的に明らかである。

しかし、実際の顎骨には大きな個体差があり、インプラント治療を設計する際に、個々のインプラントにおける"良い埋入位置"の総和が、全体の治療計画の妥当性に必ずしもつながるとは言えない。また、審美性のためのインプラント・ポジションと、生体力学的に理想のポジジョンは、少なからず背反(trade off)する場合があることからも明らかである。

また、少ない本数のインプラント治療やインプラントに対する即時荷重は、生体力学的な面での危険性を有している。反対に、本数の多すぎるインプラント治療は経済的な側面から有利とはいえないと考えられる。われわれは、それらをどのように捉えて治療計画を立案すればよいのだろうか?

インプラント治療計画における "設計"の課題を、最適デザインコンセプト(optimum design concept)を用いて考え、併せて、コンピュータ支援の外科手術の現状や問題点と、成功に導くための要点について詳しく解説する予定である。

実習:PCでのシュミレーションソフトを用いたインプラント治療のプランニング等